TCFD提言に沿った情報開示

TCFD提言に対する基本的な考え

2024年10月1日

KOKUSAI ELECTRICグループは、脱炭素社会の実現に向けて、2021年8月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同し、2023年4月にはパリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合したCO₂排出削減目標を設定しました。
本報告では2023年5月に開示したTCFD提言に沿った気候変動関連の情報を見直し、改めて開示します。

ガバナンス

KOKUSAI ELECTRICグループの気候変動に対する活動は、社長執行役員を委員長として定期的に開催するサステナビリティ委員会で審議・決定し、取締役会に報告します。取締役会は、サステナビリティ委員会からの報告に対し監督することで、そのプロセスの有効性を担保します。

気候変動対応に関するリスクと機会は、その他の環境課題とともに検討事項として、サステナビリティ委員会で審議します。サステナビリティ委員会では、これまでにCO₂排出削減目標や再生可能エネルギー導入目標のほか、SEMI半導体気候関連コンソーシアム、SBT認定取得など気候変動に関するイニシアティブへの参加の意思決定をしています。

今後はインターナルカーボンプライシング制度の導入やネットゼロ計画の他、気候変動目標の達成度の役員業績連動報酬への反映について審議していく予定です。

気候変動に対するガバナンス体制図(会社全体のガバナンス体制は統合報告書を参照)

気候変動に対するガバナンス体制図

戦略

TCFD提言に沿って、気候変動により将来発生が予想されるリスクと機会を以下のシナリオを分析することで特定しました。

参照シナリオ

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書のSSP1-1.9、SSP5-8.5、国際エネルギー機関(IEA) :WEO2020、 NZE 2050

検討温度シナリオ

1.5℃シナリオと4℃シナリオ

分析範囲

当社グループ全体と上流・下流を含むバリューチェーン全体

時間軸

短期:2030年、中期:2040年、長期:2050年

区分

想定される将来の状況と当社グループが受ける影響

1.5℃シナリオ

  • 炭素税の導入、気候変動対策の政策や法規制が強化されると仮定しました。

  • 気候変動による急性あるいは慢性の物理的影響は、事業活動の一部に影響を与えますが、大きな影響はないと仮定しました。

  • 半導体メーカーにおいては、製造プロセスの低炭素化が推進されるため、省エネ対応の半導体製造装置の需要が高まり、ビジネス成長の機会が増大すると予想しています。

4℃シナリオ

  • 気候変動対策の政策や法規制が現状から大きく変化しないと仮定しました。

  • 異常気象の激甚化等の気候変動による急性および慢性の物理的影響が発生すると仮定しました。

  • 地球温暖化に伴う感染症の増加などにより、省人化に伴う自動化ニーズが加速することで半導体メモリの需要が増加すると予想しています。

気候変動がもたらすリスクと機会の特定プロセス

気候変動がもたらす影響に対応するために2種類の気候変動シナリオを分析し、気候関連のリスク及び機会を特定しました。関係部署にて抽出したリスクと機会 計186項⽬について、相互の依存度やその他の影響の⼤きさを評価し、特に影響の大きい10項⽬を特定しました。
その上で対応策と財務影響を⼩〜⼤の3段階で評価しました。

気候変動の主要リスクと対応策

区分:↑利益 ↓支出

影響度:↑小 ↑↑中 ↑↑↑大

シナリオ 区分 カテゴリ 当社グループのリスク 発生時期 リスクが発生するバリューチェーン 当社グループへの影響 財務影響
の評価
対応策
1.5℃ 移行
リスク
法規制

炭素税の導入

短期~
中期
上流
直接操業
炭素税が導入されることで収益が悪化 ↓↓
  • 再生可能エネルギーの導入推進

  • 社内カーボンプライシングの導入による、CO₂排出量の削減推進

  • サプライチェーンの製造、輸送で使用するエネルギーに対する再生可能エネルギーへの変更要請

法改正によるScope 1,2,3の上限設定、その他規制強化

中期 直接操業 エネルギー使用の制限による事業活動の鈍化 ↓↓
  • Scope 1,2:再生可能エネルギーの導入

  • Scope 3 :省エネ製品の開発

  • 法規制対応のためのコスト増加

市場

材料、部品の価格高騰

短期~
⾧期
直接操業 開発・製造コストの増加による収益率の悪化 ↓↓
  • 代替材料適用のための認定評価の促進

  • 新規装置開発時の代替材料への適用拡大

電気料金、燃料価格の高騰

中期~
⾧期
直接操業 開発・製造コストの増加による収益率の悪化 ↓↓
  • 既存設備の省エネタイプへの更新

  • 業務の効率化による設備稼働時間の短縮

評価

お客様の評価変化

短期~
中期
下流 各バリューチェーンからの環境課題に関する要望・要請への対応
が遅れ、お客様からの評価が低下
  • 国際的なコンソーシアムに積極的に参画して、社内外に当社グループの環境への取り組みをアピール

  • ESG経営(環境施策)にリソースを投入し、お客様およびステークホルダーへの開示情報を拡大

低炭素製品や省エネ機器の開発競争の激化

短期~
中期
直接操業
下流
  • 製品に省エネ技術を適用することでコストの増加を招き、収益が悪化

  • 他社製品より環境性能が劣っていた場合に売上が減少

↓↓↓
  • ビジネスパートナーとの連携強化による省エネ技術の開発

  • 自社製品に対する環境性能認定制度の促進

1.5℃ 物理的
リスク
慢性

平均気温上昇による事務所・クリーンルームの空調エネルギーの上昇

中期~
⾧期
直接操業 電力使用量が増大することで、開発・製造コストの増大、利益の
減少を招く
  • 省エネ空調機器への変更促進

  • 再生可能エネルギーの購入および太陽光発電システムの増設

4℃ 急性

洪水・台風・大雪および土砂崩れによる道路寸断、事業所崩壊などの自然災害発生

短期~
⾧期
全て 自然災害発生による、建物破損・
従業員被災・通勤不可・部品調達の停止等で事業所の稼働が停止
↓↓↓
  • 異常気象におけるBCP対策の抽出(生産拠点の複数化/原材料の調達先の多様化など)

  • 異常災害におけるBCP対策の早期実現(洪水および大雪災害時の行動指針策定/調達リスク最小化のための調達戦略策定など)

気候変動の主要機会と対応策

区分:↑利益 ↓支出

影響度:↑小 ↑↑中 ↑↑↑大

シナリオ 区分 カテゴリ 当社グループの機会 発生時期 機会が発生するバリューチェーン 当社グループへの影響 財務影響
の評価
対応策
1.5℃ 機会 市場

低炭素商品や省エネ機器を開発する新規参入者の増加

中期~
⾧期
上流 ビジネスパートナーの環境技術レベルが向上する
  • 新規参入者とのアライアンス、M&Aなどの連携強化による新技術の取り込み

製品/サービス

お客様からの低炭素性能・再生材料に対するニーズの高まり

短期~
⾧期
下流 省エネ技術を適用した製品の開発が促進され、売上が増加する ↑↑↑
  • 省エネ性能、再生材料使用率が高い環境適合製品の研究開発推進

  • 競合他社比較で優れた省エネ機能を持つ高付加価値製品を開発し売上拡大を図る

4℃ レジリエンス

洪水・台風・大雪、土砂崩れおよび感染症増加による省人化・自動化への要請

短期~
⾧期
下流 お客様からBCP対策のため、自動化性能に優れた半導体製造装置のニーズが高まる ↑↑↑
  • 災害時でもお客様の工程において、少人数でオペレーションできるよう、自動化性能に優れた半導体製造装置を開発

気候変動の戦略への影響の分析結果

気候変動の主要リスクと対応

気候変動対策が強化された脱炭素社会においては、炭素税の導⼊、エネルギーコスト上昇により⾦属材料費の⾼騰や法改正によるCO₂排出規制などが起きると考えています。
これらに対しては、再⽣可能エネルギーの導⼊促進、部品調達や製品輸送方法の⾒直し、当社製品の省エネ性能を継続的に向上させていくことで対応します。
また、国際的な環境コンソーシアムに積極的に参画し、事業活動や製品に関する気候変動への取組みを強化することで、環境課題の解決に寄与するとともに、環境価値の創出による企業価値向上に努めます。
気候変動に伴う物理的リスクへの対応としては、省エネ空調機器への更新、異常気象や自然災害に対しては⽣産拠点の分散化、原材料の調達先の多様化および災害時の⾏動指針策定などを推進することで事業の強靭化を図ります。

気候変動の主要機会と対応

気候変動対策が強化された脱炭素社会においては、低炭素製品や省エネ機器を開発する新規参⼊者が増加し、アライアンス、M&Aなどの連携が強化されると考えました。更に、お客様の低炭素製品や再⽣材料へのニーズが⾼まると予想されるため、これらの環境性能を高めた環境適合製品の開発、販売を推進していきます。

また、気候変動に伴う物理的リスクとして、海面上昇による生産拠点の移転や、気候変動による感染症の増加により、製造業全体で人員の確保が困難になれば省⼈化や⾃動化が加速するほか、気候変動予測や自然環境の監視など様々な分野でAI需要が高まることから、半導体デバイスの需要が増加すると予測されます。

こうしたニーズに応えるために省エネ性能や自動化性能に優れた半導体製造装置の市場提供を推進していきます。

リスク管理

KOKUSAI ELECTRICグループでは、事業運営にインパクトが⼤きいリスク要因を抽出し、対策を検討しています。
気候変動による緊急性のあるリスクと、将来起こりうるリスク要因の分析・評価を⾏い、リスクを軽減する施策を決定し、事業計画に組み込んでいます。
特に重要と認識したリスクの場合は、関連部署でプロジェクトを⽴ち上げ、早期対応を進めています。

指標と目標

KOKUSAI ELECTRICグループは、省エネルギーと再⽣可能エネルギーの導⼊を推進するほか、環境負荷低減に優れた製品を環境適合製品に認定する制度を運⽤し、今後も社会における温室効果ガス(以下、「GHG])の排出削減に貢献 するために以下の⽬標を達成します。

2024年3月に「Science Based Targets initiative (SBTi)」※1より、GHG排出量削減目標が科学的根拠に基づいた目標であると認められ、SBT認定※2を取得しました。

指標

目標

⾃社が使⽤するエネルギー起因のGHG排出量の削減
(Scope 1& 2)    

2030年度までにGHG排出量を50%削減
(2021年度⽐)

販売する製品の使用によるGHG排出量の削減
(Scope 3 Category11)

2030年度までにウェーハ1枚あたりのGHG排出量を52%削減
(2021年度⽐)

※1

企業に対して科学的根拠に基づいたGHGの排出削減目標の設定を推進している国際的なイニシアティブ。

※2

パリ協定が求める⽔準と整合した、5年〜10年先を⽬標年として企業が設定するGHG排出削減⽬標。

各GHGの排出量は当社ウェブサイトで開示しております。

関連するコンテンツ